「もしかして、警察から連絡が直接あるかもしれないから事前にな。」
ナナキと向かい合って応接セットに座っている3人(っていうか二人と1匹?)の光景は一般的に言ってちょっと普通ではなかった。
3人がけのソファに身を預け、テーブルに前足をついているナナキは見た目には不安定そうで、ソファから降りたら?と思われかねない。
「そのお座りの格好、楽なのか?」
セフィロスが無遠慮に聞いて来た。
「一番楽ではないが・・・こうしないと二人とも見えないのでな。」
「顎の下をくすぐると気持ちいいんですよね。」
リーブがにっこりして、付け加える。
嬉しそうにぶるるっと身震いして、ナナキが本題を話し始めた。
「クラウド・ストライフとティファ・ロックハートが今XXX研究所に行っているのは二人とも知っているな。」
ほらほら、という風にセフィロスがリーブを見る。
「そこで不可解な殺人未遂事件が起こって、二人とも拘束されているんだ。」
おやまあ、という風にリーブが身を乗り出した。
「二人とも事件に巻き込まれたのだと思うが、今すごい話題の殺人事権に霞んで、詳細がな情報が入手できていない。でも、普段の二人の素行を等を聞く為に警察から事情聴取に来るかもしれないから。」
二人とも直属の上司だからな、と話をまとめた。
「リーブ、随分適切な人選だったな。」
セフィロスが、面白そうに言う。
「二人のせいじゃありませんよ、絶対。しかも、私だってそこまで予想ができる程千里眼じゃありませんし。」
しかも、見かけより若いんですよ私は、と言い返す。
「お前らの命令で二人は研究所に行ったのか?」
ナナキが確認にして来た質問に、まずいと思ったのか、セフィロスが素早くまぜっ返して来た。
「俺はずっと疑問に思って来たんだが、ナナキはどうやって最初この組織に入ったんだ?ペット要員か?」
リ−ブが、まずっ!と思って席を立つ。
「ほら、用が終わったら退散しましょう。いつ警察から呼び出しが来るかわかりませんし。」
ガルル・・・と喉を鳴らし始めたナナキを放ってリーブはセフィロスを引っぱって、総務部を素早く出た。
「何だよお前は。」
「あなたがまずいことを言ったんで、助けてあげたんですよ。」
廊下に出て、セフィロスからぱっと手を離して答えるリーブ。
「ああ見えても、ナナキは星の里からの強力な押しでうちにはいったんです。敵にするとめんどくさいんですよ。」
「強力なコネで入ったんだったら俺と変わらん。」
「違いますよ。だって彼は見かけがああですから。」
お前以外とつまんないこと気にするんだな、とセフィロスが実行部隊の棟に帰ろうとする。
「あとで、対策練りますから連絡下さいよ!」
聞いているのか聞いていないのか、わからない感じでセフィロスが午前中の明るい光が照らす廊下をずんずん歩いていった。
「あっ、リーブいいところに。」
オフィスに帰ろうと振り返ると、ヴィンセントがそこにいた。
「警察から電話が来ていて、緊急の用件だと言うから探していたんだ。」
「あっ!ヴィンセント!いつもの時間に出社してこないから心配しましたよ!」
普通じゃないリーブの大きな声に、ヴィンセントはちょっとびっくりした。
「回りの人に聞いたら、呼び出されて総務のナナキに会いに行ったっていうから。」
「そうだ。俺と一緒に会議の後にな。」
まんまと戻って来たセフィロスに気付いて、大声を出したかいがあったとにやりとほくそ笑むリーブ。
「二人して総務部行きなんて、何かやったのか?」
怪訝そうにセフィロスに視線を移すと、
「ほら、とにかく打ち合わせもありますし、警察の電話の様子を皆で聞きましょう。」
と、してやったりと二人を自分のオフィスへ誘導するリーブさんでした。
「とにかく、どうしてこうなっちゃったのかしら。」
ティファが屋敷の一室に閉じ込められているのが不満そうに、クラウドに話しかけた。
「ティファが焦り過ぎたせいじゃないの〜。」
俺はもうちょっと調べてから、って言ったのにと無責任そうな言葉が返ってくる。
XXX研究所は郊外の駅から車で1時間半はかかる美しい森の中にあった。
資材を運ぶ必要がある為か、道路はかなり広くてきれいに鋪装されていたが、周りの木々は深く、途中車から降りて散策をしようとしたら、帰って来た時どっちの方向に行っていいか一瞬迷ってしまう程、駅の方の風景は森の木々で隠されていた。
窓からの森の様子を見ていたティファがクラウドに向き直る。
「クラウド!そんな風に無責任なこと言うと、私が事件を解決した時はクラウドは役に立ちませんでした!って言うからね。」
ちょっと焦って、クラウドが椅子に座り直した。
二人が様子を窺おうとしたXXX研究所という名称の場所は、見かけは研究所と言うよりは古い屋敷を一部改造して研究室を造り、他の場所はそのまま住居として使用しているようだった。
全体の敷地はぱっと見わからなかったが、屋敷の母屋事体は100坪ぐらいはあるんじゃないかという広い敷地で、別に研究所の別棟がある。
ティファとクラウドがタクシーから降りて屋敷の前に立った時は、クリーム色とホワイトの塗が目を引く、シェーンブルン宮殿のような色合いのきれいな屋敷を目の前にして、思わずアポ無しはやばいかもと思った。
でも、扉をノックして出て来た優しい顔の女性に二人は思わず安心した。
「アポ無しなんですが、XXX研究所の取材に来たのですが。」
「そんな大した研究はしていないのだけれども・・・嬉しいです。」
栗色の髪で黄色いリボンをした彼女は、くるりと二人を屋敷内に案内する為背を向けた。
「お父様。研究を聞きに来たと言う方が来たのだけれど。」
ーく、クラウド。その取材内容まずくない?
ティファが囁く。
ー・・・何とかかわす・・・。
セフィロスなら、科学方面の知識は明るいし適当にごまかすことはできるかもしれないが、クラウドとティファでは・・・ばれるのは時間の問題である。
ーばらしちゃう?
ティファが囁いた瞬間に、この屋敷の主人が出て来た。
「こんなところまでようこそおいで下さいました。」
主人の大業なおじぎにひるむティファ。
ーどうしよう・・・私もお姫さまおじぎとかする必要があるのかしら・・・。
ちらりとクラウドを見ると、もうそんなことは頭に浮かんでないような様子で愛想のいい館の主人ににこにこと笑顔を向けているだけだ。
ーもう!当てにならないんだから!
ティファはにっこり笑って、勝手を知ったようにすっと主人の方を向いて深々と頭を下げたのでした。
ヴィンセントはなんでセフィロスが、この警察の電話に関係あるのかいまいち良くわからなかった。
「セフィ、何でついてくるんだ?」
そっと聞く。
「ヴィンが好きだからだよ。」
思わず色っぽい展開にしようと、セフィロスがヴィンセントを抱き寄せようとした。
「かっ・・・関係ないだろう!」
身を引くヴィンセントに、グッドタイミングで
「ほら、オフィスにつきましたよ。」
とリーブがドアを開けた。
「お前邪魔すぎ。」
セフィロスが、リーブを睨みながら部屋に入る。
「リーブ、後でどう言うことかじっくり聞かせてもらうからな。」
ヴィンセントにさえも睨まれて、ちょっと苦笑いしつつ、ドアを閉めるリーブさんでした。
部屋に入ると、警察の電話を受けた人があきれた感じで待っていた。
「リ−ブさん。のんびりしすぎです。警察の方は電話を切ってしまって、こちらにいらっしゃると。」
「ちょうどいいじゃないか。」
にやりと笑って、側にあるソファに落ち着くセフィロス。
「私は退散するからな。」
付き合いきれない、という感じのヴィンセントのそでをリーブが掴んで引っぱり戻した。
「!?何だよ。」
「あなただって関係あるんです。残って下さい。」
はあ!?という表情をするヴィンセントに、
「お前いつもそんな風にヴィンに頼っているのか?情けない。」
と、セフィロスが追い討ちをかける。
「あなた、うるさいですよ。調査部はこうやって運営しているんですからがちゃがちゃ言わないで下さい。」
と言いながら、ヴィンセントを引っぱり戻してセフィロスの隣に座らせた。
「おかえり。」
セフィロスがヴィンセントを見て言う。
「お前は何の為に警察が来るのかわかってるんだろう?」
はあ・・・とため息をついてヴィンセントがセフィロスに、何があったのか教えてくれ、と言った。
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