ヴィンセントが新羅カンパニーから出ようとしている時、ちょうど電話かがかかってきた。
「もしもし。」
彼を送ってきたイリーナが、脇に立っている。
色々調べていたら、既に16時頃になっていて西日が少し差してきていた。
「それなら、私も一緒にいた方がいいから今からそっちに行く。」
携帯を急いで切ってイリーナに、ありがとう、と言って立ち去ろうとした。
「ヴァレンタインさん、そのディスク本当に機密書類入っているのでちゃんと返して下さいね。コピーできないようになってますから。」
イリーナが彼に急いで伝えると、了解、とヴィンセントがディスクを振って瞬く間に視界から去っていった。
新羅カンパニー本社のビルがある道路はすずかけの木の並木道になっていて、青々とした大きな葉が午前中の雨のおかげで生き生きとした緑を見せている。
「やっぱりヴァレンタインさんもかっこいいですねぇ〜�」
イリーナが、ほぉ〜、と一息ついていると、
「お前、ちゃんとヴィンセントの役に立ったんだろうな。」
と声がした。
ぎくっとして後ろを向くイリーナ。
「つ、ツォンさん!もう帰ったんですか?」
今日は帰らない予定だったんじゃ・・・と言いつつ嬉しそうだった。
「ところで、何の為にうちの資料室を使いたがってたんだ?」
あっ・・・聞いてない!とイリーナが言ったとたんに、彼女はツォンにダメだしをされていたが、そんなイリーナちゃんが幸せそうなのはやっぱり恋する乙女�だからでしょう。
セフィロスが問題の住所を調べて、用が終わった時にちょうど一階の会議室の前を通った。
「あっ、セフィロス。」
めざとくティファが奥から見つけて声をかける。
「何か分かったの?」
いい加減資料と向き合うのもうんざりしていたのだろう。
席を立って、彼を会議室の中に招き入れた。
「いや、変な住所を見つけただけだ。」
部屋の中に入ると、テーブルいっぱいに広げられている資料の山にあきれてセフィロスがリーブの正面に腰掛けた。
「お前これ全部調べる気か?」
リーブが顔をあげる。
「これっていう、取っ掛かりがまだ見つからないんですよ。ところで、セフィロスの手がかりってなんですか?」
「ミッドガル郊外にある、研究所の住所だ。」
リーブの目の前にひらりと紙を一枚見せる。
リーブがその紙をガン見して、思わず手を伸ばしてセフィロスから取り上げた。
「クラウド、この住所探している所かもしれませんよ。」
クラウドが寄って来た。
セフィロスが調べた研究所の詳細は、確かに皆が調べていた履歴にを持つ遺伝子研究所に酷似していて、注意してみなければ同じものだと思われたに違いないくらいだった。
「でも、そこは親子二人でやっている私邸の一部が研究所になっているだけだぞ。」
セフィロスが念押しに付け加える。
「施設も多分貧弱だし、その父親は確かに遺伝子研究の権威みたいだけどな。」
「セフィロス、これどこで見つけたの?」
クラウドが、住所を見ながら質問する。
「4番目の被害者のカルテの書きかけの紹介状にあった。」
多分これ、5番目の被害者も行こうとしていたとこだよ、とクラウドがリーブに確認のように言う。
「私もそう思っていた所です。」
クラウドに答えた後、リーブがセフィロスに向き直った。
「この研究所を訪問してみませんか?何かわかるかもしれません。」
「親子でやっているから、あんまり大人数は警戒されると思うぞ。」
セフィロスは既に考えていたらしく、即答する。
あんまり、警戒されない人選がいいですねぇ・・・とリーブの視線はクラウドとティファの前でぴたりと止まった。
ヴァレンタイン邸にルクレツィアとヴィンセントが戻ると、セフィロスが出かけた時の位置でソファにくつろいでいた。
「食事はしたのか。」
18時頃だったので、声をかけてルクレツィアを部屋に戻す。
「まだだ。でも、取りあえず方針が決まったから。」
「こっちもだ。」
ヴィンセントソファに座ると、二人とも資料を広げ始めた。
「新羅カンパニーの資料室に行ってみたんだ。」
ヴィンセントがPCに写し出した資料は、例の宝条の助手をしていた研究者が新羅製作所時代にしていた研究記録と、その後タークスが独自に調査した彼の活動が宝条の記録と一緒になっていた。
「やつが遺伝子研究所で政府に認可されていないクローン実験を行ったことで、逮捕された所までは話したな。」
資料を繰りながら、ヴィンセントが話し始めた。
セフィロスが頷く。
「こっちの資料は、宝条と実験をしていた時の記録。未確認生命体のゲノム解析を主にしていたらしい。」
セフィロスが、解析の結果を軽く斜読みする。
「良くわからない結果だな。」
「あまり結果が役に立たなかったせいもあって、その後やつは宝条の助手を離れて別の研究に振られたが、専門の遺伝子解析の技術を生かせない所だったせいか辞めている。」
その後の資料は、タークスの調査だったので社内の書類のように整然とはしていなかったが、その後の彼の行動の概要を追うには十分だった。
「新羅を辞めて3年もしないうちに研究所を設立なんて、金はどうしたんだろうな。」
研究員とはいえサラリーマンだろ、とセフィロスが言う。
「まあ、研究所だけなら強力なスポンサーがついたか金を借りたかと思うんだが、どうもいきなり裕福になったらしく、結構郊外や地方の土地を漁って購入をしている。」
タークスが調べたらしい、土地の売買記録と登記簿の資料が延々と続いていた。
「あれ?この土地・・・」
画面をスクロールするヴィンセントの手をとめる。
「今はこの親子が住んでいるんじゃないのか。」
セフィロスが今日入手した研究所の資料と、ルクレツィアの母親のカルテを取り出した。
「かもしれない・・・。」
住所を丹念に見比べてヴィンセントが頷く
「ちょっとつながって来たな。」
セフィロスがにやりと笑う。
「まだ全然だけどな。ここへは行くのか?」
クラウドとティファが様子を見に行くみたいだが・・・とセフィロスが言いかけた。
と、ルクレツィアが食事を待って、ぽつんと食卓に座っているのが目に入った。
「そろそろ飯だ。」
セフィロスがさくっとソファを立つ。
ルクレツィアごめん、とヴィンセントが急いで声をかけて食事の用意を始めた。
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