「で、何があったんだ?」
ルクレツィアの部屋の扉を閉めて、ヴィンセントがセフィロスに聞いた。
時間は10時過ぎ。
居間の大時計がチクタク秒針を奏でて、なにか急かすような感じにもとれる。
「ちょっと込み入ってるんだが。」
セフィロスがソファに座る。
促されるように、ヴィンセントも彼の隣に座った。
なかなか話を始めないセフィロスに、
「なんか飲む?」
とヴィンセントがソファを立ちそうになった。
「別にいい。」
と言うのでソファにヴィンセントが再び座ると、ふわりとセフィロスが彼の上にのしかかってきた。
「ヴィンの唇で十分だ。」
断わる間もなく、セフィロスがくちづけてきてヴィンセントはそのままキスされた。
「今日俺が行った2番目、3番目の被害者の担当医師はすり変わっていた。」
えっ!?・・・と反応するヴィンセントが何か言う前に、また唇を奪われた。
優しく抱き締めるセフィロスの腕からすり抜けようと、さりげなく腕が離れるタイミングを窺うヴィンセント。
「キス一回で情報一個分なのか。」
「高いか?」
高い、と呟いたヴィンセントにさらにセフィロスがまたくちづけてきた。
ソファに体を押し付けられて、セフィロスが上から甘えてくる。
ー狭いけど・・・移動したいって言ったら部屋に連れてかれそうだな・・・(汗)
「最後の被害者は医師だった。」
ヴィンセントの意図に関係なく、また唇を寄せようとするセフィロスを手で遮ぎった。
「その情報は私も入手済だ。」
彼の下から抜け出そうと、そっと身動きした。
「じゃあ、そいつが最初の被害者の医院に勤めていたことがあったっていうのは?」
一瞬動きが止まった所を軽く抱き締められて、また身動きが取れなくなってしまった。
「しかも結構職場を転々としていて、一時期妙な研究所勤めもしていたらしい。
そこの場所が分かったら行く予定だ。」
話ながら何となく彼の白い首筋を見ていたら、口づけたくなってすうっと舌をはわせた。
「はっ・・・あっ!」
ヴィンセントが目をつぶって頭をちょっとふるわせる。
反応が色っぽくて、もっと声を聞きたくなった。
「セフィっ・・・ルクレツィアが出てきたら・・・」
あっ・・・と首筋を這い回る舌を感じて、また声をあげた。
ヴィンセントの耳もとにセフィロスの口が囁く。
「生理に初めてなったんだろ。多分ショックと痛みで部屋から出てこないと思うぞ。」
少し耳に舌を入れると、ヴィンセントがぴくりと動いて
「んっ・・・、ちょっ・・・セフィ・・・」
と言ったのが聞こえてきた。
かまわずに舌で耳をぴちゃぴちゃ嘗めると、ヴィンセントの声が高くなってくる。
「気持ちいいんだ。」
本格的に抱こうとして、セフィロスがちょっと身動きしたら、
「ヴィンセント・・・やっぱり薬飲む・・・。」
とルクレツィアが部屋のドアを開けて出てきた。
ヴィンセントが薄目を開け、セフィロスがソファから少し身体を起こす。
「セフィロス・・・ヴィンセントは?」
ルクレツィアがつらそうに言った。
セフィロスが口を開く前にヴィンセントがするりとソファから起きだして、彼女に様子を聞いている。
ー・・・このガキ・・・いいとこだったのに。
ルクレツィアに色々と世話をしているヴィンセントを見ながら、思わず小さくため息をついてしまったセフィロス様でした。


どしゃぶりの雨の中ティファがマリンたちを学校へ送ってから会社に着くと、クラウドとリーブが山ほどの資料を抱えてすぐ目の前の廊下を曲って行った。
ーなになに〜?二人とも!
声をかける間もなくさっさと二人が行ってしまったので、たたんだ傘を手に追いかける。
ぽたぽたと道しるべのようにしずくが廊下を落ちていって、そろそろ落ちなくなってきた時、クラウドが入った会議室が見えた。
「おはよう!クラウド。何してるの。」
元気にティファが声をかける。
クラウドは彼女の出現にびっくりして無言だったが、リーブはにっこりして彼女に言った。
「おはようございます、ティファさん、手伝ってくれるんですか?」
会議室を見ると、20人以上の座席が備え付けられているテーブルの上に、満載の資料が乗っている。
「何人集めているの?」
「今いるだけ、ですよね。」
クラウドが頷き、念のためティファが回りを見渡しても自分を入れて3人しか見えなかった。
「今暇な時期だし・・・いいわよ。」
ちょっとみんなに言ってくるね、とティファは一言残して一度会議室を出ていった。
「ところで何探すの?」
ティファが色々と調整をしてきて、会議室に戻った時には二人とも山ほどある書類に埋もれて、それぞれ端の方から調べていた。
「研究所。」
クラウドが、一個ずつ新聞記事の切り抜きや、メディアをPCに入れて検索したり、書物の該当箇所を探したりと、書類の次の山になかなか進まない。
「これを探しているんですよ。」
リーブがティファに研究所の概要を手渡した。
「遺伝子研究所」
と表題に書いてあったその書類には、住所や責任者、主な研究者と設立からの履歴などが記載されていたが、分量的にとても情報が多いとは思えなかった。
「そこが移転したらしいんです。」
ティファが読み終わった様子を見て、リーブが写真を見せる。
それは空き地と、通りに面している場所に読めるように立て看板がおいてある写真だった。
そして立て看板には、
「『遺伝子研究所』は移転しました。ご用のある方はこちらへ御連絡下さい。住所・・・」
と連絡先が書いてある。
「ここに連絡してみたの?」
ティファが尋ねると
「ちょっと住所がおかしいんですよ、これ。」
とリーブが答えた。
隣ではクラウドが黙々と書類の山をこなしている。
会議室の窓には雨がずっと打ちつけていて、窓から外の様子は全くと言っていい程見えなかった。
「実際にはない住所なの?」
「そうです。」
へぇ・・・架空請求みたいね、と答えたティファだったが、その様子にクラウドが口を挟んだ。
「でも、遺伝子研究所なんて架空請求に全然関係ないじゃないか。そんなことするのおかしくないか?」
彼の書類を調べる手がちょっと止まる。
「ここ、何で事件に関係あるの?」
ティファの質問に、リーブが答えた。
「繁華街から引き上げた医院の所有者を調べたら、ここが出てきたんですよ。でも所在地に行ったらないし、移転先は変な住所だし、怪しさ満載だったのでこうやって研究所の本当の移転場所を探している訳です。」
笑顔を崩さないリーブの顔に愛想笑いで答えてから、ティファは改めて山と積まれている資料をたっぷり2〜3分はかけて眺めた。
リーブの笑顔がちょっと固まる。
「で、この資料はどう言うコンセプトで集めたのかしら?」
資料の山と対峙すべく腹をすえたティファが質問する。
「関係ありそうなの全部。あと、直感とか。」
リーブが答える前にクラウドが口を挟み、それを聞いたティファは、直感ですか〜、と自然に深〜いため息が出てきたのでした。

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