14時頃にティファがそろそろ休憩を取ろうと席を立った時に、同僚の子から声をかけられた。
「ティファさん、電話です。XXスクールから。」
ーえっ?何かあったのかしら。
電話を取ると、その学校の校長先生からだった。
今日は徹底的に尾行の相手を洗い出したいからとヴィンセントから頼まれて、ティファはルクレツィアをマリンと一緒のスクールにおいて来たのだった。
「ロックハートさん、今日連れて来て頂いたお子さんなんですけど、お昼過ぎに抜け出してしまったみたいで。」
ーええっ!あんな大人しそうな子なのに?
母親の犯人を探す為に単身ヴィンセントを尾行しているルクレツィアを知らないので、びっくりしたのだ。
「お宅のマリンちゃんもちょっと動揺しているし、私も校内の心当たりを探してみたのですが居ないので、もしかして学校の外に行ったんじゃないかと思いまして。」
「私、多少心当たりがあるので探します!」
一瞬ヴィンセントに連絡を取ろうかと思ったが、直ぐに連絡が取れない場合もありそうだった。
受話器を置いてから周りの同僚に、ちょっと預かった子供が行方不明だから探してくるね!、と声をかけて全速力でオフィスを出ていった。
「行方不明って・・・大変じゃん・・・。」
電話をつないだ同僚があっけに取られたのは言うまでもない。


「ねっ、だからクラウド、協力して。」
急いでルクレツィアの捜索に行く前に、ティファは増援を当たっていた。
ー・・・
リーブは二人のやり取りを聞きながら無言で書類のチェックをしている。
「でも、俺はセフィロスからこの仕事をよろしくって頼まれているんだよ。」
「大丈夫よ。この仕事も結局はあの事件関連だし、もっと緊急だもの。」
「でも・・・」
実行部隊の指揮系統は明確で、行動は全て上司の指示によって決まる。
今回も、実行部隊の長のセフィロスが調査部の手伝いを指示したから来ているだけで、いくら事件に関連あるからといって、ティファの頼みを勤務中に聞くのは・・・。
「クラウド、私からセフィロスに言っておきますので、ルクレツィアを迎えにいくのをお願いできませんか。」
なかなか煮え切らないクラウドにリーブが言い添えた。
クラウドがリーブを見る。
「大丈夫です。私はセフィロスと会社の中の位置付けは同じですから。しっかりフォローできますよ。」
リーブがにっこり笑って言葉を続けた。
「結局はうちの部署の案件をお願いしているんですし、クラウドだってあんな小さい娘が行方不明なのは心配でしょう・・・」
全部言うまでも無くクラウドが席を立ち、すみませんお願いします、とリーブに挨拶をしてティファと出て行った。
大量の資料と一緒に、ポツン、と取り残されるリーブ。
ーまあ、私がひそかにティファを応援しているって言うのもあるんですけどねぇ・・・
まあセフィロスの面白い行動と一緒にクラウドも私の会社ライフを楽しませてもらえれば言うことないんですが、とまたしても生暖かく見守る対象が増えたちょっと黒いリーブさんでした。
ヴィンセントが警察本部の方へ向かおうと背後を気にしながら歩いている途中に、かなりあせっているクラウドに会った。
ヴィンセントを見るとすぐに追い付いてきて、困ったような顔をして言った。
「ルクレツィアを探しているんだけど、心当たりある?」
「探すって、学校は・・・」
「抜け出したみたいなんだ。」
「抜け出した?」
ー・・・思ったよりも積極的な子だったんだな。
あっけに取られたついでに、思わず笑ってしまった。
くすくす笑うヴィンセントが、解せなくて不審そうに見るクラウド。
ー研究室にいた時のルクレツィアもよく抜け出してたけど。
「心配ないって事?」
笑いが止まらないヴィンセントにクラウドが聞く。
「いや、やっぱり心配だから。ミッドガル中央公園か、家の近くの遊歩道。あとは私の家か・・・もしかしたら中央駅にいるかも。」
ーあとは私を見つけて付いて来ているか・・・
でも背後をかなり気にしながら歩いて来たので、今日は絶対に付けられている様子は無いことは自信がある。
「ティファはヴィンセントの家にいってみるって言ってたから・・・」
クラウドが携帯を取り出して、電話をかける。
「ティファ?ルクレツィアいた?」
会話の様子から家にはいないことが分かった。
「じゃあ、私は中央駅に行ってみるから。」
ヴィンセントが伝えると、クラウドがうなずいて俺達は中央公園と、遊歩道を見てみるよ、と言って別れた。
「お前何でここにいるんだ?」
「ママを殺した犯人を捕まえるためよ。」
「お前がここにいて何ができるんだ?」
「ここにいたら何か思い出すか、変な人に会うかもしれないじゃない。」
実地調査してくるから今日は帰らない、と秘書に伝えて久しぶりにミッドガル中央駅に行ってみたセフィロスはため息をついて、ルクレツィアに言った。
「お前さぁ、こんなことしてヴィンがどれだけ心配すると思ってるんだよ。」
まあ、気持ちは分かるけどな、とフォローつつ彼女の手を取った。
「帰るぞ。」
ミッドガルの陸の玄関、中央駅はどの時間帯に訪れても人いきれが激しく、まっすぐ歩くのが困難なくらいの人込みがある場所だった。
そんな人込みのが場所だからちょっとぐらい目立つ容姿の銀髪のきれいな男と、どう見てもまだ義務教育中の女の子が言い合いをしてるなんて誰も気に留めないような感じだ。
セフィロスに手を取られたルクレツィアはちょっと不満そうだったが、彼をまっすぐ見つめて口を開いた。
「あのね、セフィロス。私ここにいれば何か思い出すかもしれない。」
セフィロスが何でここに来たのかと言うと、もちろん事件の実地調査の為にさらっと見ておこうと思ったのだった。
「どう言う意味だよ。」
「私お母さんがいなくなった日の事って、あんまり思い出したく無かったし、おぼえてないの。」
ふうん・・・と相づちを打つセフィロス。
「でも、思い出したいって思って、でもどうすればいいか分からなくって、でも、ヴィンセントは私を普通の生活に戻そうとして、そうするとあの事件の事忘れそうだし・・・」
ルクレツィアがどう言えばいいか分からない自分の気持ちを話し始める。
「30分ぐらいだったら付き合ってやる。」
セフィロスがルクレツィアの隣にさくっと陣取った。
「手離すけど、変なやつに連れてかれないように俺のコート掴んでろよ。」
うん、と安心したように嬉しそうな顔をするルクレツィアはしっかりとセフィロスのコートの裾をつかんだ。
駅を通る人々の顔を二人は真剣に眺めている。
ーいっくら現場は個室だからって、こんな人通りの多い所を殺す場所に選ぶのは普通はないよな。
銀髪の男と、少女の組み合わせなんて一歩間違えれば補導されそうな勢いだが話し掛ける人は警官ですらいない。
ちらりとルクレツィアを見ると、真剣に人の顔を見ていた。
すぐ人込みに目を移す。
「!あっ、ヴィン。」
セフィロスが口を開いた。
ルクレツィアもセフィロスが見ている方に顔を向ける。
夕方のラッシュアワーに重なっていたので、声をかけても聞こえないかと思われたが、ヴィンセントはすぐに気付いて二人の方に来た。
「ルクレツィア、心配した。」
彼女を抱き締めてから、セフィロスに声をかける。
「セフィが一緒にいてくれたんだな。ありがとう。」
「いや・・・まあ・・・。」
偶然会ったので曖昧に答える。
「もう遅いから、家に帰ろう。」
セフィも一緒に夕食とるよな、声をかけられ素直に家に帰る二人だった。

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